親の家は生前贈与と相続、どちらが得なのか?~親の家は、“相続”が有利?~ 税金・空き家・遺産分割・認知症対策まで税理士法人アクシアがわかりやすく解説

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親の家は生前贈与と相続、どちらが得なのかを示すイメージ

「親の家を生前に子どもの名義へ変更した方がよいのでしょうか」
「相続まで待った方が税金は安くなるのでしょうか」
「兄弟で揉めないように、今のうちに何か対策しておくべきでしょうか」


税理士法人アクシアでは、このようなご相談を数多くいただいています。

インターネット上では、「生前贈与をすれば節税になる」「親が元気なうちに名義変更した方がよい」「相続より生前贈与の方が有利」といった情報を見かけることがあります。

しかし、実際の相続対策はそれほど単純ではありません。
親の家を子どもへ引き継ぐ場合には、相続税や贈与税だけでなく、不動産取得税、登録免許税、将来売却するときの譲渡所得税まで考慮する必要があります。

さらに、空き家問題、認知症対策、遺産分割、兄弟姉妹との関係なども含めて、総合的に検討することが重要です。
結論から申し上げると、「生前贈与が得」「相続が得」と一律に判断することはできません。
ただし、一般的な居住用不動産については、相続による承継が有利になるケースも多く見受けられます。

一方で、地主の方、賃貸アパートオーナーの方、不動産を複数所有している方、相続税が高額になる可能性がある方については、生前贈与や相続時精算課税制度なども含めて、慎重な検討が必要になる場合があります。

大切なのは、「どちらが得か」だけで考えるのではなく、「自分の家庭にはどちらが適しているか」を考えることです。

まずは3分でわかる結論

親の家の承継方法を比較すると、一般的には次のような特徴があります。

比較項目生前贈与相続
税負担贈与税が発生する場合がある基礎控除や特例が使える場合がある
不動産取得税原則かかる原則かからない
登録免許税比較的高い比較的低い
認知症対策生前に対応可能相続発生後の対応
遺産分割対策事前に方針を決めやすい相続人間の協議が必要
一般的な自宅慎重な検討が必要有力な選択肢
収益不動産有効な場合がある個別検討が必要

つまり、一般的な自宅であれば、相続による承継が有利になるケースが少なくありません。
しかし、地主や不動産オーナー、資産家の方については、結論が変わることがあります。
また、親の年齢、健康状態、認知症リスク、相続人同士の関係、将来売却する予定の有無なども、重要な判断材料になります。

なぜ一般的な自宅は相続が有利になりやすいのか

理由① 小規模宅地等の特例を利用できる可能性がある

相続税には「小規模宅地等の特例」という制度があります。
一定の要件を満たした場合、自宅の土地について大幅な評価減が認められる可能性があります。例えば、被相続人が住んでいた自宅の土地については、一定要件を満たすことで、330㎡まで80%評価減できるケースがあります。詳しくは、国税庁の「小規模宅地等の特例」でも確認できます。

東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県など地価が高い地域では、この特例を使えるかどうかによって、相続税額が大きく変わることも珍しくありません。

ただし、小規模宅地等の特例は、有名な制度である一方、要件は決して単純ではありません。
誰が自宅を取得するのか、同居していたのか別居だったのか、取得する人が配偶者なのか子どもなのか、相続後もその不動産を保有するのか、老人ホームへの入所状況はどうだったのかなど、さまざまな事情によって適用できるかどうかが変わります。

そのため、「自宅だから当然使えるだろう」と自己判断で進めるのではなく、事前に専門家へ確認することをおすすめします。

理由② 相続では不動産取得税が原則かからない

不動産を生前贈与した場合には、原則として不動産取得税が発生します。

一方で、相続によって不動産を取得した場合には、原則として不動産取得税は課税されません。
不動産の評価額が高いほど、この差は大きくなります。

「親子間の名義変更だから、そこまで大きな負担はないだろう」
と思っていたところ、実際には不動産取得税、登録免許税、司法書士報酬などが想定以上に発生することもあります。
特に都心部や地価の高い地域に不動産を所有している場合には、名義変更に伴う諸費用も無視できません。

理由③ 登録免許税の負担が軽い

不動産の名義変更には、登録免許税が発生します。
一般的には、相続登記の場合は固定資産税評価額に0.4%をかけた金額、贈与登記の場合は固定資産税評価額に2.0%をかけた金額が登録免許税の目安になります。

同じ親子間の名義変更であっても、相続による登記なのか、生前贈与による登記なのかによって、税率には大きな差があります。
そのため、贈与税だけを見て判断するのではなく、不動産取得税、登録免許税、司法書士報酬などの諸費用まで含めて考えると、相続の方が有利になるケースがあります。

それでも生前贈与を検討すべきケース

生前贈与が常に不利というわけではありません。

むしろ、将来値上がりが見込まれる資産を早めに移転したい場合や、賃貸不動産の収益を子どもへ移したい場合、自社株承継や事業承継対策を行う場合、相続税が高額になる可能性が高い場合などには、生前贈与が有効な選択肢になることがあります。
また、親が元気なうちに財産の承継方針を決めておきたい場合にも、生前贈与を含めた対策を検討する意味があります。

例えば、収益不動産を所有している場合には、不動産そのものだけでなく、将来発生する家賃収入を次世代へ移転できる可能性があります。
このようなケースでは、生前贈与が資産承継の一つの選択肢になることがあります。

ただし、「生前贈与=節税」と考えるのは危険です。
生前贈与をすれば、贈与税が発生する場合があります。
また、不動産取得税や登録免許税など、相続では発生しない、または負担が軽い費用がかかることもあります。

さらに、相続時精算課税制度を利用する場合にも、将来の相続税との関係、他の相続人との公平性、小規模宅地等の特例との関係、将来売却するときの税金などを総合的に検討する必要があります。

生前贈与は、うまく使えば有効な制度です。
しかし、税額シミュレーションや家族全体の承継方針を確認しないまま進めると、かえって不利になることもあります。

見落とされやすい「将来売却するときの税金」

相続対策というと、相続税や贈与税に注目が集まりがちです。

しかし実務では、将来売却するときの譲渡所得税が重要になることがあります。
例えば、親が2,000万円で購入した自宅を、将来6,000万円で売却した場合、売却益に税金がかかる可能性があります。

相続や贈与の時点だけを見て判断すると、将来大きな税負担が発生することもあるため注意が必要です。
特に、親の家を引き継いだ後に「いずれ売却するかもしれない」と考えている場合には、相続税、贈与税、不動産取得税、登録免許税だけでなく、譲渡所得税まで含めて検討することが大切です。

相続した不動産を売却するときに検討したい特例

空き家の3,000万円特別控除

相続した空き家については、一定の要件を満たすことで、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる可能性があります。
詳しくは、国税庁の「被相続人の居住用財産を売ったときの特例」でも確認できます。

ただし、この特例には細かな要件があります。建物の建築時期、耐震基準、売却時期、被相続人の居住状況、相続人の人数などによって、適用できるかどうかが変わります。
相続人が複数いる場合には、控除額の扱いが変わるケースもあるため注意が必要です。

取得費加算の特例

相続税を支払った方が、相続した不動産を一定期間内に売却する場合には、取得費加算の特例を利用できる可能性があります。
詳しくは、国税庁の「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」でも確認できます。

この制度を利用すると、支払った相続税のうち一定額を取得費へ加算できるため、譲渡所得税を軽減できる場合があります。
実務では、空き家の3,000万円特別控除を使うべきか、取得費加算の特例を使うべきかが重要になることがあります。

売却予定がある場合には、相続税や贈与税だけで判断するのではなく、不動産取得税、登録免許税、譲渡所得税まで含めて検討することが大切です。

後編 失敗事例・認知症対策・地主の相続対策・アクシアに相談するメリット

ここからは、親の家を生前贈与するか、相続まで待つかを考える際に、実際によく問題になるケースを見ていきます。
税金だけを見て判断した結果、後から家族が困ってしまうケースも少なくありません。

よくある失敗事例

失敗事例① とりあえず兄弟共有にした

相続直後は特に問題がないように見えたため、親の家を兄弟共有にしたケースです。
ところが数年後、売却したい人、家として残したい人、賃貸として活用したい人で意見が分かれてしまいました。
その結果、売却もできず、建替えもできず、賃貸活用も進まず、さらに修繕費の負担をめぐって揉めてしまうという状態になることがあります。

不動産は、預金のように簡単に分けることができません。

そのため、「とりあえず共有にしておけばよい」という考え方は、慎重に判断する必要があります。
兄弟姉妹の関係が現在は良好であっても、将来の売却、修繕、管理、固定資産税の負担などをめぐって意見が分かれる可能性があります。親の家を誰が取得するのか、売却するのか、誰かが住むのか、賃貸活用するのかについては、できるだけ早い段階で方向性を整理しておくことが大切です。

失敗事例② 生前贈与を急ぎすぎた

インターネットで「生前贈与は得らしい」という情報を見て、十分な試算をしないまま不動産を子ども名義へ変更したケースです。
しかし実際には、贈与税、不動産取得税、登録免許税、将来の譲渡所得税などが発生し、結果として相続まで待った方が有利だったというケースもあります。

生前贈与は、目的や使い方によっては有効な方法です。
しかし、税額シミュレーションを行わずに進めることはおすすめできません。

特に不動産は金額が大きいため、贈与税だけでなく、名義変更に伴う諸費用や将来売却時の税金まで含めて確認する必要があります。

失敗事例③ 親が認知症になった

近年、非常に増えているのが、親の判断能力が低下してから不動産の処分や活用を検討するケースです。
親の判断能力が低下すると、不動産の売却、贈与、賃貸契約、建替え、大規模修繕などが難しくなる場合があります。

その結果、「売却したいのに売れない」「実家を処分したいのに処分できない」という状態になることがあります。
このような事態を避けるためには、親が元気なうちに、遺言、家族信託、任意後見などを事前に検討しておくことが重要です。

なお、これらの対策は税務だけで完結する話ではありません。司法書士や弁護士などの専門領域とも密接に関係します。
そのため、税理士だけで判断するのではなく、必要に応じて専門家同士が連携しながら進めることが大切です。

失敗事例④ 相続税はかからないのに空き家になった

相続税がかからなかったため、「特に対策は不要だろう」と考えていたケースです。
しかし、実際には誰も住まなくなり、管理する人も決まらず、雑草や老朽化が進み、近隣から苦情が来て、固定資産税だけが毎年発生するという問題が起きることがあります。

相続税がかからないことと、相続対策が不要であることは別問題です。

実家が空き家になる可能性がある場合には、相続税対策だけでなく、相続後の管理、売却、活用方法まで考えておくことが重要です。
特に、親の家が遠方にある場合や、相続人がすでに別の場所に自宅を持っている場合には、相続後に誰が管理するのかを早めに確認しておく必要があります。

地主・不動産オーナーは結論が変わる

親の家が一般的な自宅のみであれば、相続を前提に検討しても問題ないケースが多くあります。

しかし、アパート、貸家、駐車場、収益物件、貸地、複数の不動産を所有している場合は話が変わります。
このような場合には、貸家建付地評価、小規模宅地等の特例、納税資金、借入金、空室リスク、修繕負担、法人活用、次世代の管理能力など、さまざまな要素を考える必要があります。

不動産承継では、税金だけ下げればよいわけではありません。
相続税を下げることだけを優先した結果、承継後に子どもが管理できなかったり、空室が増えたり、借入金だけが残ったりすることもあります。
特に賃貸不動産や複数の不動産を所有している場合には、相続税の節税だけでなく、承継後の管理、収益性、修繕計画、借入金の返済、家族間の役割分担まで考える必要があります。

不動産承継で本当に重要なのは、「相続税の節税」だけではありません。
家族が承継後に困らないことこそが、重要な視点です。

税務署から見ても説明できる対策が大切

相続税申告では、名義預金の有無、生前贈与の実態、不動産評価、小規模宅地等の特例の適用要件などが確認されることがあります。
例えば、生前贈与を行ったとしても、贈与契約書がない、通帳を親が管理している、子どもが自由に使えないという状況では、実質的には贈与と認められない可能性があります。

節税対策では、「税務署に説明できること」が非常に重要です。
形だけ整えていても、実態が伴っていなければ、税務調査で問題になることがあります。

税理士法人アクシアでも、無理な節税ではなく、合理的で説明可能な対策を重視しています。
生前贈与を行う場合には、贈与契約書の作成、資金移動の記録、通帳や印鑑の管理状況、受贈者本人が財産を管理しているかどうかなど、後から説明できる状態を整えておくことが大切です。

相続登記義務化にも注意

令和6年4月から相続登記が義務化されました。
相続によって不動産を取得した場合には、相続登記が必要になります。

過去の相続で名義変更が止まったままになっている不動産も少なくありません。親の代、祖父母の代から登記がそのままになっている場合、いざ売却や活用をしようとしても、手続きが複雑になることがあります。

登記は司法書士の専門分野です。
親の家の承継を考える際には、税務だけでなく、法務面まで含めて確認しておくことが大切です。

実際のご相談では結論が逆になることもあります

相続相談を受けていると、当初のご家族の考えと、実際に検討した後の結論が逆になるケースは少なくありません。
例えば、「生前贈与した方が得だと思っていたが、実際に試算すると相続の方が有利だった」というケースがあります。

逆に、「相続の方が得だと思っていたが、親の認知症対策や家族関係を考えると、生前対策が必要だった」というケースもあります。

重要なのは、インターネット上の一般論ではありません。

大切なのは、ご自身の財産内容、家族構成、不動産の状況に合わせて判断することです。
相続対策は、他人の成功事例をそのまま真似すればうまくいくものではありません。それぞれのご家庭に合わせた設計が必要になります。

税理士法人アクシアに相談するメリット

親の家の承継では、生前贈与と相続のどちらが有利なのか、相続税はかかるのか、小規模宅地等の特例は使えるのか、将来売却すると税金はいくらか、兄弟共有を避けるにはどうすればよいのか、認知症対策として何を準備すべきかなどを総合的に判断する必要があります。

税理士法人アクシアでは、相続税申告をはじめ、生前対策、資産承継支援、不動産オーナー支援、事業承継支援、中小企業税務まで幅広く対応しています。
私たちが重視しているのは、家族が揉めないこと、承継後に困らないこと、税務署へ説明できること、金融機関から見ても合理的であることです。

また、必要に応じて、司法書士、弁護士、行政書士、金融機関、不動産会社などと連携しながら対応しています。
相続や不動産承継は、税務だけで完結するものではありません。登記、遺言、家族信託、遺産分割、不動産売却、金融機関との調整など、複数の専門分野が関係します。

だからこそ、早い段階で全体像を整理し、どの専門家に何を相談すべきかを明確にしておくことが大切です。

あなたはどのタイプですか?

次の項目に当てはまる方は、一度シミュレーションをおすすめします。

  • Aタイプ親の自宅のみ所有
  • → 相続を中心に検討した方が有利な可能性があります。

  • Bタイプ賃貸不動産を所有している
  • → 生前贈与や法人活用を含めた検討が必要な場合があります。

  • Cタイプ親が75歳以上で認知症が心配
  • → 相続税対策だけでなく認知症対策の検討が重要です。

  • Dタイプ兄弟間で話し合いができていない
  • → 遺産分割で揉める前に方向性を整理しておくことをおすすめします。

  • Eタイプ実家が空き家になりそう
  • → 売却・活用・管理方法まで含めた検討が必要です。

  • Fタイプ金融機関やハウスメーカーから相続対策を提案されている
  • → 提案内容がご自身に合っているか、一度第三者視点で確認することをおすすめします。

まとめ

親の家は「税金」だけでなく「家族の将来」まで考えて判断する

親の家を生前贈与するべきか、相続まで待つべきか。
その答えは家庭によって異なります。

一般的な居住用不動産であれば、相続による承継が有利になるケースも多くあります。
一方で、地主の方、不動産オーナーの方、相続税が高額になる方、賃貸不動産を所有している方については、結論が大きく変わる場合があります。

重要なのは、「一般論で判断しないこと」です。

税理士法人アクシアでは、相続税申告、生前贈与、資産承継、不動産オーナーの相続対策まで幅広く対応しています。
親の家の承継について迷われている方は、まずは「自分の場合はどうなのか」を整理することから始めてみてください。

相続対策は、早く決めることよりも、正しく整理することが大切です。

ご留意事項

本記事は、親の家の生前贈与と相続について、一般的な考え方をわかりやすく解説したものです。
実際の税負担や利用できる制度は、財産内容、家族構成、不動産の利用状況、過去の贈与、将来の売却予定などによって異なります。

また、遺言、家族信託、任意後見、相続登記などについては、税務以外の専門領域も含まれます。
具体的な手続きを検討する際には、税理士、司法書士、弁護士等の専門家へ個別に相談することをおすすめします。

執筆・監修

税理士法人アクシア 代表税理士 曽根 隆寛(そね たかひろ)

1971年神奈川県川崎市生まれ。1997年日本大学大学院商学研究科修了。2001年に税理士事務所を開業し、2017年に税理士法人アクシアを設立、代表社員に就任。東京税理士会所属(登録番号:第92574号)、行政書士(東京行政書士会 第24084002号)、登録政治資金監査人(第5233号)。複数の金融機関・企業の登録専門家として、相続・事業承継・税務顧問など多角的な税務支援を行う。 ラジオ番組「LIFE CROSSING」レギュラー出演中。

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