家族名義の預金は相続税で問題になる? | 名義預金の確認ポイントと生前対策

[COLUMN]

COLUMN

名義預金と相続税の判定基準を示すイメージ

「家族の名義にしてあるお金なら、自分の財産にはならない」。そう信じて、奥さま名義の口座にコツコツ貯めたり、お子さま・お孫さま名義で積み立てたりしている方は少なくありません。
ところが、その口座が相続のときに「名義預金」と判定され、亡くなった方の財産として相続税の対象に加算される――そんなケースが、税務調査の現場では数多く起きています。

本記事では、税理士法人アクシア代表の曽根が、名義預金と判定される基準・税務署に把握される理由・そして名義預金にしないための正しい対策まで、やさしく解説します。「良かれと思ってやってきたこと」が、ご家族の負担にならないように、いま一度確認していきましょう。

「名義預金」とは何かについては、ラジオ番組『LIFE CROSSING』第027回「名義預金って何?へそくりは大丈夫?」でも、やさしくお話ししています。
番組URL:https://life-crossing.com/210/

1. 結論|名義が家族でも、実質が被相続人のお金なら相続財産に加算される

1-1. 判定は「名義」ではなく「お金の実質的な持ち主」で決まる

まず結論からお伝えします。預金が誰の財産かは、通帳に書かれた名義ではなく、そのお金の実質的な持ち主が誰かで判断されます。
たとえば、夫の収入を妻名義の口座に貯めていた場合、名義は妻であっても、原資や管理状況によっては、夫が亡くなったときに夫の相続財産と判断される可能性があります。家族の名義になっていても、税務署から見れば「実質は被相続人のお金」というわけです。

名義人と実質的な所有者が異なることを示す図

1-2. 根拠は「実質所有者課税」の考え方

このような扱いの根拠は、税の世界で広く採られている実質所有者課税の原則にあります。財産は形式的な名義人ではなく、実質的に支配・所有している人のものとして課税する、という考え方です。
相続税でも同じです。亡くなった方が自由に出し入れでき、実質的に管理・支配していた預金は、たとえ家族名義であっても、亡くなった方の相続財産に含めて申告しなければなりません。

1-3. 「贈与したつもり」が一番危ない

ここで最も多い誤解が「家族名義の口座に振り込んだ=贈与した」という思い込みです。
口座へお金を移しただけでは、贈与があったことを十分に説明できない場合があります。贈与は「あげます」「もらいます」という双方の合意があって成立するため、名義人本人が口座の存在を知らない、自由に使えない、通帳や印鑑を贈与者が管理しているといった場合には、贈与ではなく名義預金と判断される可能性があります。

「ちゃんと贈与しているつもり」が、実は名義預金だった――この落とし穴を、次章で具体的に見ていきます。

税理士法人アクシアにも、名義預金に関するご相談が数多く寄せられます。
例えば、次のようなケースです。

  • 孫の将来のために、祖父母が孫名義の口座へ20年以上積み立てを続けていた
  • 妻名義の定期預金が2,000万円以上あり、「妻の財産だと思っていたが、本当に問題ないのか不安になった」
  • 相続税申告後に税務署から家族名義の預金について質問を受けた
  • 子ども名義の口座へ毎年お金を移していたが、贈与契約書を作っていなかった
  • 専業主婦のへそくりが相続財産に含まれるのか分からない
  • 相続対策として家族名義にしていた預金が、名義預金に該当しないか心配になった

実際には、同じ「家族名義の口座」でも結論は一律ではありません。
名義預金かどうかは、お金の出どころ、通帳や印鑑の管理状況、贈与の事実、名義人本人の認識などを総合的に見て判断されます。
そこで次章では、税務署がどのような点を確認するのか、名義預金と判断されやすいポイントを見ていきましょう。

2. 名義預金と判定される4つのポイント

名義預金かどうかは、次の4つの観点から総合的に判断されます。1つだけで即アウトとは限りませんが、複数当てはまるほど名義預金と認定されやすくなります。

2-1. ①お金の出どころ(原資)は誰か

最も重視されるのが「その口座のお金は、もともと誰が稼いだお金か」です。名義人に十分な収入がないのに高額な残高がある場合、出どころが疑われます。専業主婦やまだ働いていないお子さま・お孫さまの名義で大きな残高があれば、原資は親や祖父母と見られやすくなります。

2-2. ②通帳・印鑑・キャッシュカードを誰が管理しているか

口座の通帳・印鑑・カードを、名義人ではなく被相続人が保管・管理していると、名義預金の典型例とされます。
「名義は家族でも、実際に支配しているのは被相続人」と判断される材料になるためです。印鑑を他の口座と共用しているケースも要注意です。

2-3. ③贈与の事実があるか

前章でお伝えしたとおり、贈与は双方の合意で成立します。
贈与契約書がない、名義人が「もらった」と認識していない、口座を自由に使えない――こうした状態では、贈与の事実は認められません。
また、贈与の事実を説明できるよう、贈与契約書や振込記録などを残しておくことも重要です。

2-4. ④利息や運用益を誰が受け取っているか

口座に付く利息や、運用して得た利益を被相続人が受け取って使っていた場合も、実質的な持ち主は被相続人と判断されます。
お金から生まれる果実を誰が得ているかも、重要な判定材料です。

2-5. 【自己診断】あなたの口座は大丈夫?

名義預金かどうかを判定する5つのチェックポイント

上記に1つでも当てはまる場合、すぐに名義預金と決まるわけではありません。

ただし、相続税申告や税務調査で確認が必要になる可能性があります。
特に、金額が大きい場合、長年にわたって積み立てている場合、通帳や印鑑を名義人本人が管理していない場合には、早めに整理しておくことをおすすめします。

3. なぜ税務調査でバレる?/判定されたらどうなる

「家族名義の口座まで、税務署にどうして分かるの?」と疑問に思われるかもしれません。
相続税の申告内容と被相続人の生前の財産状況との間に不自然な差がある場合などには、税務署が資金の流れを確認することがあります。
その過程で、必要に応じて家族名義の口座について確認が行われることもあります。

3-1. 過去の入出金履歴は追跡される

税務署は、亡くなった方だけでなく家族名義の口座についても、金融機関へ取引履歴を照会する権限を持っています。
過去にさかのぼって入出金の流れを確認できるため、「被相続人の口座から家族名義の口座へ、まとまったお金が移されていないか」といった資金の動きは追跡されます。
被相続人の生前の収入や資産状況と、相続財産として申告された額に不自然な差があれば、「申告されていない財産があるのでは」と着目されることになります。

相続手続きや生前対策の場面では、金融機関からも資金の形成過程や贈与の有無について確認されることがあります。
預金の名義だけでなく、いつ、誰から、どのような目的で資金が移ったのかを整理しておくことは、相続税申告だけでなく、金融機関での手続きの面でも重要です。

3-2. 相続税の「お尋ね」が届くことも

相続が発生すると、税務署から「相続についてのお尋ね」という書面が届く場合があります。財産の状況を確認するための案内で、ここでの回答内容も、その後の調査の入り口になります。
税務調査や「お尋ね」の具体的な進み方については、放送回で詳しくお話ししています。
相続税の税務調査の実態については、ラジオ番組『LIFE CROSSING』第016回「相続税の税務調査のリアル」で詳しく取り上げています。
番組URL:https://life-crossing.com/173/
税務署からの「お尋ね」については、ラジオ番組『LIFE CROSSING』第015回「税務署から突然届く「お尋ね」、その正体とは?」で詳しくお話ししています。
番組URL:https://life-crossing.com/148/

3-3. 名義預金と判定されたら|加算税・延滞税の負担

名義預金が申告漏れと判断されると、本来の相続税に加えてペナルティの税金が課されます。特に、意図的に名義を使って財産を隠したと見なされた場合の重加算税は、負担が重くなります。

名義預金の申告漏れで課される加算税の種類と税率

※税率は国税通則法に基づく目安です。適用年や金額により変動します。
「家族のために良かれと思ってやったこと」が、結果的にご家族に重い追徴課税を負わせてしまう。だからこそ、生前のうちに正しく整えておくことが大切です。

4. 専業主婦の”へそくり”・子や孫名義の口座が危ない/固有財産との線引き

名義預金が特に問題になりやすいのが、次の2つのパターンです。

4-1. 子や孫名義の口座(存在を知らせていないケース)

お子さま・お孫さまの将来のためにと、本人に知らせず親や祖父母が口座を作り、毎年お金を振り込んでいるケースです。良かれと思った積み立てでも、本人が口座の存在を知らず、通帳・印鑑を親や祖父母が管理しているなら、贈与は成立しておらず名義預金と判定されます。

4-2. 専業主婦のへそくり(原資が夫の収入のケース)

夫から受け取った生活費をやりくりし、余った分を妻名義の口座に貯めた、いわゆる「へそくり」です。原資をたどると夫の収入であるため、夫が亡くなったときに夫の相続財産として認定される可能性があります。

4-3. ただし「妻の固有財産」は名義預金ではない

ここで安心していただきたいのが、妻名義の預金がすべて名義預金になるわけではないという点です。お金の出どころが妻自身であれば、それは妻の固有の財産であり、名義預金には当たりません。

名義預金のリスクが高い口座と低い口座の比較

ポイントは「そのお金を誰が稼いだか・誰からもらったか」です。やりくりして貯めた分でも原資が夫の収入なら名義預金リスクがありますが、妻自身の収入や、妻が実家から相続・贈与で得たお金は、妻の財産として扱われます。原資が混在している場合は、いつ・いくら・どこから入ったかを整理しておくと、後の判断がスムーズです。

4-4. 生命保険の「名義保険」にも同じ落とし穴

同じ問題は、生命保険にも潜んでいます。生命保険も、契約者や受取人の名義だけでなく、実際に誰が保険料を負担していたかによって、相続税・贈与税・所得税の課税関係が変わることがあります。受取人の名義だけで安心せず、保険料負担者を確認しておくことが大切です。
→関連記事:生命保険金は500万円×法定相続人まで非課税|相続税対策と納税資金の準備

5. 名義預金にしないための正しい贈与のやり方/既存口座の整理

ここからは、いま手を打てる対策です。すでに貯めてしまった分の整理と、これからの正しい贈与の両面で見ていきましょう。

5-1. すでに貯めた家族名義の口座をどう整理するか

すでに家族名義で貯めた分がある場合、まずは原資ごとに「誰のお金か」を仕分けします。

  • 名義人本人の収入・固有財産が原資 → そのままで問題なし
  • 被相続人の収入が原資 → 名義預金と判断される可能性があるため、管理状況や贈与の有無を確認する

被相続人の収入が原資である場合でも、それだけで直ちに名義預金と決まるわけではありません。
ただし、通帳・印鑑・キャッシュカードを誰が管理していたか、名義人がその預金を自由に使える状態だったか、贈与の合意や記録があるかによっては、名義預金と判断される可能性があります。

改めて正式に贈与する(贈与契約を結び、名義人本人に管理を移す)か、被相続人の財産として認識しておくか、いずれかに整理する必要があります。
金額が大きい場合は、贈与税とのバランスも含めて専門家に相談されるのが安全です。

5-2. これからの贈与は「3つの原則」を守る

名義預金にしないためには、贈与を形だけでなく実態として成立させることが重要です。次の3つを守りましょう。

  • 1. 贈与契約書を作成する:贈与のたびに「あげます・もらいます」の合意を書面で残します。
    このとき、贈与契約書があるだけで安心できるわけではありません。実際に受贈者本人が財産を管理し、自由に使える状態になっているかも重要です。
  • 2. 受贈者本人が管理する:通帳・印鑑・カードは、もらう側本人が保管し、自由に使える状態にします。
  • 3. あえて贈与税の申告をする:基礎控除(年110万円)を少し超える額を贈与し、贈与税を申告しておくと、贈与の事実を客観的に示す記録になります。
名義預金にしないための正しい贈与のチェックリスト

5-3. 暦年贈与は「7年持ち戻し」に注意

毎年110万円の基礎控除を使った暦年贈与は有効な対策ですが、注意点があります。

令和5年度税制改正により、令和6年1月1日以後の暦年贈与については、相続財産に加算される期間が従来の3年から最長7年へ段階的に延長されました。
なお、実際に何年分が加算されるかは相続開始日によって異なり、令和8年12月31日までの相続では従来どおり相続開始前3年以内が対象です。

亡くなる直前の駆け込み贈与は加算の対象になるため、早めに始めることが肝心です。
→関連記事:生前贈与は相続前7年が「持ち戻し」対象に|2024年改正後の正しい節税戦略

5-4. 孫の教育資金は「都度贈与」が基本

お孫さまの教育資金については、必要なお金を必要な都度、直接支払う「都度贈与」は非課税です(扶養義務者間で通常必要と認められる範囲)。入学金や授業料を、その都度祖父母が支払う形であれば、贈与税はかかりません。まとめて口座に移すと名義預金になりやすいため、都度の支払いが安全です。
なお、まとまった額を一括で非課税にできた「教育資金一括贈与の非課税措置」は、2026年3月末で終了しました。今後は都度贈与や暦年贈与を中心に考えていく形になります。

教育資金の贈与については、ラジオ番組『LIFE CROSSING』第023回「教育資金の一括贈与、やりすぎていませんか?」でも取り上げています。
番組URL:https://life-crossing.com/198/(※放送時点の制度内容です。一括贈与の特例は2026年3月末で終了しています)

6. 名義預金の不安は「個別判定」が確実|アクシアの初回無料相談へ

税理士法人アクシアでの相続・生前対策相談の様子

名義預金かどうかは、お金の出どころ・管理の実態・贈与の有無などを総合的に見て判断されます。「うちの口座はセーフなのかアウトなのか」は、ご家庭の事情によって変わるため、一律の正解はありません。
実際のご相談では、「名義預金だと思っていたが、原資や管理状況を確認した結果、大きな問題にならない可能性があった」「反対に、問題ないと思っていた家族名義の預金が、相続税申告で慎重な検討を要するものだった」というケースがあります。

名義預金の判断は、インターネット上の一般論だけでは決められません。
預金の原資、通帳や印鑑の管理状況、贈与契約書の有無、名義人本人の認識、過去の入出金履歴、相続税全体への影響を総合的に確認する必要があります。

だからこそ、判断に迷ったときは専門家による個別判定が確実です。そして名義預金は、ご本人がお元気なうちであれば、状況に応じて対策や整理を検討できる余地があるのが救いです。早めに動くほど、選べる対策は多くなります。

税理士法人アクシアでは、相続税申告だけでなく、生前贈与、生命保険、不動産、二次相続、納税資金まで含めて、相続全体を見ながら対策を検討します。
必要に応じて司法書士・弁護士等とも連携し、税務だけでなく相続手続き全体を見据えた整理を行います。

また、初回相談を無料で承っています。

家族名義の口座の整理、正しい贈与の進め方、相続税全体のシミュレーションまで、ご家族のご事情に寄り添ってご提案いたします。

「良かれと思ってやってきたこと」を、安心できる形に整えるお手伝いをいたします。

まとめ

本記事の要点を整理します。

  • 預金は名義ではなく実質的な持ち主で判断される。家族名義でも、原資が被相続人なら相続財産に加算される
  • 名義預金は①お金の出どころ ②通帳・印鑑の管理 ③贈与の事実 ④利息の受取の4点で総合判断される
  • 家族名義の口座も税務署に把握される。申告漏れには加算税・延滞税が課され、意図的な隠蔽は重加算税の対象
  • 専業主婦のへそくりでも、妻自身の収入や実家からの相続・贈与が原資なら名義預金ではない
  • 対策は既存口座の仕分けと、贈与契約書・本人管理・あえて申告の3原則。孫の教育費は都度贈与が基本

「うちの口座は大丈夫だろうか」と少しでも気になった方は、お元気な今のうちに、税理士法人アクシアの無料相談をぜひご活用ください。

【出典】

  • 国税庁タックスアンサー No.4402「贈与税がかかる場合」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4402.htm
  • 国税庁タックスアンサー No.4405「贈与税がかからない場合」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4405.htm
  • 国税庁タックスアンサーNo.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税|国税庁
  • https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4510.htm
  • 相続税法第2条(相続税の課税財産の範囲)
  • 相続税法第19条(生前贈与加算・2024年改正による7年への延長)
  • 相続税法第21条の3第1項第2号(扶養義務者間の生活費・教育費の非課税)
  • 国税庁タックスアンサーNo.4408「贈与税の計算と税率(暦年課税)」
  • 国税庁タックスアンサー No.4161「贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」
  • 民法第549条(贈与は諾成契約)
  • 国税通則法第65条〜第68条(過少申告・無申告・重加算税)、第60条(延滞税)

執筆・監修

税理士法人アクシア 代表税理士 曽根 隆寛(そね たかひろ)

1971年神奈川県川崎市生まれ。1997年日本大学大学院商学研究科修了。2001年に税理士事務所を開業し、2017年に税理士法人アクシアを設立、代表社員に就任。東京税理士会所属(登録番号:第92574号)、行政書士(東京行政書士会 第24084002号)、登録政治資金監査人(第5233号)。複数の金融機関・企業の登録専門家として、相続・事業承継・税務顧問など多角的な税務支援を行う。 ラジオ番組「LIFE CROSSING」レギュラー出演中。

ページTOPへ戻る➜